たつの市新宮町と姫路市林田町を分ける尾根は南北に長く延びているが、南からその尾根を眺めると、三等三角点(点名・北山)を持つ396mピークが堂々とした姿で目立っている。林田町は以前は独立した町であり、更に以前は林田村と伊勢村に分かれるが、その一つの伊勢村を紹介する伊勢村史を見ると、そこに村の地図が付いており、396mピークは点名と同じ北山の名で載っている。その北山を初めて登ったのは99年4月のことで、林田川の土手を起点に南から尾根を登ったが、その途中に笹の広がる展望地があって、瀬戸の海をが眺められたことが印象として残っている。但し山頂はさほど展望は良くなかったと記憶している。その北山を新宮町側からも登ってみたいと考えていたのだが、それを漸く実行したのは、初登山から13年後の2012年6月の第2日曜日のことだった。
前日に梅雨入りしており、この日の空は青空が少し覗いているものの、薄ぼやけた雲が広がっていた。また空気は湿り気を帯びており、梅雨の季節に入ったことを感じさせられた。この日考えていたコースは、新宮町の川東集落から市境尾根に出る道(地図の破線路)を登って、市境尾根を北から北山へ向かおうと言うものだった。この日は昼過ぎまで用事があり、自宅を離れたのは13時前だった。新宮町内で県道26号線に入り、揖保川に架かる新香橋を渡ると川東集落だった。集落の道は細かったが、若宮八幡宮の境内は広くなっており、その一隅に駐車とした。「安志」の地図を開いて破線路の起点を頭に描くと、若宮八幡宮を離れてスタートとした。破線路は谷沿いに付いているので、その谷へと向かって行くと、すんなりと登山道に入って行けた。道は古道の雰囲気を漂わせていたが、あまり歩かれていないようで、崩れている所も多かった。また倒木も目に付いた。なるべく道を歩くように心がけて進んでいたところ、途中から道も不確かになってきた。そこで沢沿いの歩き易い所を選んで登って行くことにしたが、それが道を誤ることになった。途中で方向が東ではなく、南東に向かっていることに気付いたので、地図を取り出した。どうも峠に向かう沢では無く、一つ南側の沢に入ってしまったようだった。ただ下生えも無く、無理なく歩けたので、そのまま登って行くことにした。問題は足下が礫(れき)が多くあり、けっこうつまずき易くなっていることだった。それも足下に注意すれば問題ないことだった。山中に入ったときは少し蒸し暑さを感じていたものの、途中からはけっこう涼しさを感じながら登れた。気温を見ると、21℃とこの季節にしては低めだった。但し湿っぽい涼しさだったが。山稜が近づいてくると沢がはっきりしなくなったので、右手の斜面に取り付いて尾根に出た。それは支尾根で、東の方向に進んで市境尾根に合流した。支尾根に出てからは灌木は減って、けっこう気楽に歩けるようになった。以前はササが茂っていたのだろうが、そのササが消えてしまったものと思われた。主尾根も歩き易く、歩くうちに大きな岩を見た先で、ちょっと開けたピークに出た。そこが北山の山頂だった。支境尾根に出てから5分での到着だった。峠経由と比べて斜めに登ってきたので、峠から尾根を辿って来るよりも短い時間で付けたためか、何となく呆気なく着いた気持ちだった。その山頂だったが、前回と比べて樹木が生長しており、展望は更に悪くなっていた。北は全く見えず、東も僅かだった。ただ西の方向の展望はけっこう良かったが、それも山頂より数メートル下った位置で、ちょうど木立が途切れたようになっている所だった。そこに立って漸く新龍アルプスがすっきりと眺められた。梅雨に入ったとあって視界は薄ぼんやりとしていたが、眺めとしては悪くなかった。山頂には涼しさがあり、ときおりうっすらとながら陽射しも現れた。その中で暫しの憩いのときを過ごした。下山は往路で予定していたコースを歩くことにした。いわゆる北の峠まで尾根を辿り、そこより地図の破線路を歩いて川東集落に戻ると言うものだった。主尾根は始め木立が空いてゆったりと歩けていたのだが、380mほどの小さなピークを越した先はやや急坂となって、方向が分かり難くなっていた。それでも北に向かうことを意識して下って行くと、送電塔(龍野揖保線44番)の建つ峠に出た。そこからは峠道を下ればと思っていたのだが、道はあまりはっきりしていなかった。それでも辿れることは辿れたので、道を外さないように下って行った。それが途中から更にはっきりしなくなり、また往路コースと同じく礫が多く、更に何度か折れ曲がった。そこで道は意識せず歩き易そうな所を選んで下った。その途中で左手の沢と合流したが、そこが往路で道を誤った所だった。峠に向かうコースの方が曲がっていたことが分かり、これではルートを間違っても仕方なかったと納得した。その後も沢筋の歩き易い所を適当に歩いた。どうも地図の破線路は消えようとしているようだった。結局は思っていた以上のマイナーコースで終始してしまったが、静けさに包まれて気ままに歩けたのは良かった。
(2012/7記)(2021/5改訂)(2024/10写真改訂) |