三濃山へのコースは南麓の羅漢の里コース以外にも幾つかあるが、一番易しいと思われる光都からの北コースを歩いていなかった。どうみても簡単過ぎるので、雨模様で遠くに出かけ難い日にでも登ろうかと考えていたところ、2011年8月の第三土曜日が条件的に合うことになった。この日はどんよりとした曇り空で、いつ雨が降ってもおかしくなかった。そこで三濃山の北コースへと向かったのだが、パートナーは用事があって一人で出かけることになった。三濃山トンネルを抜けて新宮町光都に入り、すぐの交差点を左折する。三濃山の北麓を西へと進むと上郡町のエリアに入り、三日月運送のそばですんなりと三濃山の標識を見た。その位置で左折すると、道はすぐ先の第二配水池で終点だった。第二配水池のそばが登山口になっており、山頂までの距離は800mほどだった。その位置で標高は390mなので、山頂との標高差は100m少々でしかない。車はどこに止めても迷惑になりそうに思えないので、登山口のそばに駐車とした。登山道には三濃山遊歩道の名が付いており、距離からしてハイキングとも言えず、散歩をするようなものだった。ただ車を止めた頃より小雨が降り出しており、雨具を着てのハイキングだった。遊歩道は緩やかな道として始まっており、点々と標識が付いていた。何とも気楽なもので、登山道の踏み心地を味わいながら歩いた。その遊歩道のままに山頂かと思っていたのだが、山頂が近づくと、ごく普通の山道となった。そして歩き始めてから20分で山頂到着だった。ところで、この三濃山を登るもう一つの目的は山頂の老アカガシを見ることだった。太い幹は枯れたも同然だったが、ひこばえは地道に育っていた。この老木を何とか再生させようと保存会が頑張っており、老木のそばに給水タンクが置かれているのを見た。良く見ると雨水を自動で溜めて、また自動で水が根本に届くようにしていたのは感心するばかりだった。その山頂に着いたときは雨ははっきりとした降り方になっており、周囲はうっすらとガスがかかっていた。そのため視界は利かず、ただ山頂の佇まいを眺めるのみだった。その山頂の様子だが、他の山と同様にアセビが増えており、タケニグサが繁茂していた。どちらもシカが嫌う植物だった。山頂には30分ほど居ただけで下山とする。その下山は登ってきた遊歩道をただ引き返すだけとしていたのだが、途中まで戻ったとき、遊歩道が二手に分かれていることに気が付いた。そこで往路と違う左手の道を下って行くことにした。そちらは往路の道よりもいっそう緩やかで、北西方向の尾根上に続いていた。平坦な所も現れてなかなか登山口に着かないと思いながら下っていると、最後は車道に合流した。その遊歩道の入口には山頂まで1.6kmと書かれていた。後は車道沿いの歩道を東へと歩いて駐車地点に戻るだけだったが、何気なしに目の前の分譲地に出てみると、思いがけない光景に出会った。その分譲地の北端に20頭ほどの鹿がたむろしており、半数はさっと逃げたが、残りの10頭ほどはこちらを見ながらゆっくりと離れていった。こんなに多くの鹿の群れを見たのは初めてで、これでは鹿の食害も進むはずだと思わずにはいられなかった。
(2011/9記)(2021/5改訂) |