五大山には苦い思い出があった。登ったのは1993年のことで、市島町の白豪寺から五大山に登ったまでは良かったのだが、その頃は元気があったのか尾根をずっと歩いて五台山を越してクロイシ山まで歩いてしまった。その後は市島町乙河内に下山するつもりが鴨内峠から下山してしまい、車道を長々と歩くことになってしまった。白豪寺に戻ってきたときは19時になっており、10時間のハイキングになっていた。おかげで車道歩きの印象ばかり強く、五大山の印象は薄くなってしまった。そこで改めて五大山を登って五大山の印象を強く持ちたくなった。向かったのは2018年3月24日のこと。コースとしては白豪寺コースではなく、西麓の安養寺からのコースを登ることにした。但しそれでは登山時間としては短いものになりそうだったので、五大山を登るのは午後にして、午前は五大山を眺められる山として西向かいの安全山を登ることにした。
期待通りに安全山から五大山を眺めて車に戻ってきたときは12時半になっていた。車中で手早く昼食を済ませると、すぐに安養寺へと車を走らせた。安養寺の前に着くとその手前に広い駐車場を見たので、そこに駐車とした。登山を開始する前に安養寺の境内に寄り道をした。その安養寺の手前に安養寺橋があり、そこからは愛宕山の姿が眺められた。登山コースに入るに当たってまずは害獣避けゲートを通ることになり、その先から林道歩きとなった。林道は程なく二手に分かれたので、右側に向かうとすぐに登山口が現れた。登山口の名は愛宕山登山口となっていた。そこからの登山道は意外やあまり参道の感じは無く、落ち葉が多くあったり小石が多くあり、歩き易いとは言えなかった。但しほぼつづら折れの道として続いていたので、ゆっくりと登れば休む必要もなく登って行けた。展望が現れない登りだったので、このまま尾根に出るものと思っていたところ、あと500m地点を過ぎたとき突然のように展望地が現れた。そこは「覗き岩」で、岩の上に立つと西に向かって遮るものの無い展望が得られた。先ほどまで登っていた安全山を前景に遠くは千ヶ峰まで眺められた。その覗き岩から20分ほど登って主尾根に出た。標識があり、右手に向かえば五大山で、左手は愛宕山と書かれていたが、愛宕山の山頂に建つ愛宕堂は間近に見えていた。登山道はほぼ真っ直ぐ愛宕山に続いていたようだった。愛宕堂に着いて一休みとした。そこは周囲を樹林が囲んでおり、展望はほとんど無かった。木々の隙間から遠くの山並みがちらりと見えるだけだった。風があってその風の冷たさを我慢しながらだったので、10分ほどで休憩を切り上げると尾根道を引き返して五大山を目指した。その五大山へと鞍部に出るまでは、岩場が多くあったり急坂があったりと慎重さを要した。ただ展望が所々で得られて、展望を楽しみながら歩くことになった。南西方向が眺められただけでなく、北の方向が開けたときは五台山や遠くは大江山、更には若狭の青葉山までも望めた。送電塔のそばを通って五大山の登りに入ると、易しく歩けるようになった。周囲にツツジの木を見るようになり、蕾を膨らませていた。その辺りがヒカゲツツジの群落地ではと思えた。五大山の山頂に着くとそこは山頂らしく開けており。ベンチも置かれて休むには良い所だった。展望も素晴らしく、多紀アルプスの展望を楽しめた。午後に入って気温は上がっており、風も収まって陽射しの暖かさを甘受出来た。そして五大山は良い山だと素直に思えた。五大山で20分ばかりの休憩を楽しむと、下山は往路を引き返した。また岩場を慎重に歩いて愛宕山へと戻った。そして西斜面の登山道へと入ったが、つづら折れの道を下るとあって易しい下りだった。下山では覗き岩に立つこともせず足を止めずに下ったので、主尾根を離れてから30分ほどで登山口に戻ってきた。駐車地点に着いたのは16時前だったので、長く歩いたようでも休憩時間を含めても3時間で終わっており、予定通り半日で楽しめる山だったと思った。
(2021/10記) |