千丈寺山を初めて登ったのは、2000年の元旦のことだった。コースとしては南麓の北浦地区から登ったのだが、一等三角点を持つ北摂の山にしては少しマイナーな印象を受けた。その千丈寺山の印象が薄れてきたので再訪しようと考え出したとき、東麓の乙原地区からのコースが整備されて易しいコースになっていることを知った。また下山として北へと下って行けば、特にロングコースになることも無く周回で歩けることも出来そうだと分かった。そこでこのルートで再訪することにした。
それを実行したのは2013年3月の下旬、春の暖かさが漸く訪れだした23日の土曜日のことだった。姫路市から三田市に向かうには高速道を使えば速いのだが、大回りで走るのがどうも嫌で、下道を走ることにした。そのため三田市まで2時間以上かかってしまった。県道49号線を北上して行くと、「乙原てんぐの森」の標識が現れた。それに従って脇道へと入るり、高台にある乙原てんぐの森の駐車場に着くことになった。駐車場は10台分ほどのスペースがあったが、先に止まっていたのは1台のみであった。その先も車道は続いていたが、クサリが張られており、一般車の進入は出来ないようになっていた。朝のうちは雲の多かった空も、その頃には青空の広がる空に変わっていた。ただ陽射しは暖かいものの風にはまだ冷たさがあった。その風の冷たさを感じながら、クサリを越えて舗装路を歩き始めた。舗装路は堰堤がある沢のそばまでで、沢を渡った先から遊歩道状の登山道が始まっていた。登山道は沢沿いを西の方向へと続いており、途中から階段の道となった。始めは沢の右岸側を歩いていたが、途中で左岸側となった。それがまた右岸側になったりと、何度か沢を横切った。その登山道の傾斜が次第に増してきたので、汗をかきながら登ることになった。沢から離れ出すと階段は終わってごく普通の登山道となったが、傾斜はまだきつめで、ロープが張られていた。その登山道が緩やかになると、程なく尾根道に合流した。そこは北千丈寺山の手前の位置だった。そこからは北千丈寺山へは向かわず、南へと尾根道を歩いて行った。そちらが山頂となる南千丈寺山の方向だった。尾根の小径は雑木に囲まれた優しげな道で、ほぼ平坦で続いていた。進むうちに東に展望が現れて、大船山がすっきりと眺められた。その先で山頂への登りが始まり、おおよそ30mほど登ると大きな岩が現れた。そこが山頂で、大岩を越えた先の平らになった所に一等三角点が設置されていた。山頂の岩からだと2メートル近く低い位置なので、山頂は標高591mはありそうだった。その山頂だが、それまであまり受けなかった風を一気に受けることになった。冷たさのある風なので、その中で昼食をとりたく無かったので辺りを探ると、西側へ数メートル低い位置に祠が見えた。そこなら風は無さそうなので、祠の前へと移動した。祠は千丈寺大権現で、予想通り風を受けることは無く、良い休憩場所だった。但し展望は悪く、木立の間から西の山並みを僅かに見るだけだった。その西は春霞と言うか、ごくうっすらとした視界だった。一休みの後は、改めて山頂に立ってみた。冷たい風を受けることになったが、山頂は北東方向に展望があり、三国ヶ嶽辺りが眺められた。山頂は三角点周りが開けているので、今少し暖かい季節になれば、そこが良い休憩場所になるのではと思われた。山頂では35分ばかり休んで、次は北千丈寺山へと向かった。途中までは歩いてきた道を引き返す形となり、乙原コースとの合流点を過ぎると登り坂になった。登ると言っても南千丈寺山よりも低いので、20mも登れば北千丈寺山の山頂だった。その山頂はすっかり雑木林になっており、展望は無かった。そこからはそのまま尾根を北へと下って行った。細々と小径は続いており、少し下った位置より一気に展望が広がった。辺りは若木の植林地で、北から北東にかけての山並みが眺められた。その風景を見ながら下って行くと、小径は尾根筋から離れ出した。その小径がどこへ行くのか分からないので、こちらは尾根を辿って行くことにした。尾根に戻ると、道は無いものの樹間が空いており、ヤブコギの感じでも無く下って行けた。但し急傾斜のため、木に掴まりながらの下りだった。その尾根下りで、また小径に合流した。どうやら北西に離れ出していた小径が、再び尾根に戻ってきたようだった。後は尾根の小径を下って峠へと下り着いた。そこからは東へと歩いて行く。周囲は植林地で小径のはっきりしない所もあったが、谷筋を伝うだけなので適当に下って行くと、林道終点に出た。その林道を歩いて東へと向かって行くと、南北に走る大根谷林道に合流した。その合流点には千丈寺山と書かれた小さな標識が付いていた。後は南へと道なりに歩いて乙原集落へと近づいた。
(2013/4記)(2021/2改訂) |