2017年に宍粟50名山に新たに5山が加えられて、その5山は「宍粟別選5名山」と呼ばれているが、その一つが三郡山だった。初めて聞く名だったが、そのことよりも三郡山自体が漠然としていた。名前の通り宍粟郡、朝来郡、養父郡と三つの郡の境に位置するピークだったが、地図を見ると地形としてはなだらかな上にピークには三角点も標高点も無く、周囲を見るとその辺りでむしろ目に付くのはその北に位置する967mピーク(点名・間歩谷)と980mピークの方だった。宍粟50名山の三国平と同じように、単に位置的なことから新たに名前を付けて山として呼ぶようにしたのではと思えた。その三郡山を含めて黒原山、奥組山と続く宍粟市と朝来市との境界尾根は1996年の秋に歩いており、易しく歩ける尾根との印象を持っていた。「宍粟別選5名山」のパンフレットではその境界尾根だけでなく宍粟市と養父市との境界尾根も歩いて周回コースとして紹介していた。そこでその周回コースを新緑の季節か紅葉の季節かどちらかで歩こうと考えていた。
向かったのは2019年の紅葉の季節、11月の第二日曜日のことだった。偶然にも23年前と同じ日だった。宍粟市一宮町に入って安積橋交差点より県道6号線を北上すると、三方町で県道は国道429号線との重複区間となった。その重複区間は繁盛小学校跡を過ぎた先で終わることになり、直進方向の県道から分かれて右折側となる国道の方を進んだ。上り坂で東へと向かうことになり、少し走って現れたのは黒原集落だった。その集落の中で三郡山の標識が現れた。それに従って北へと向かう枝道に入った。まだ集落は続いており、その民家が終わると周囲は物寂しい風景となり、程なく黒原・井内浄水場が現れた。そこがパンフレットの紹介コースではスタート点となっている位置で、数台分の駐車スペースがあった。そこからのハイキングの様子は下の写真帳をご覧いただきたい。パンフレットは三郡山登山を周回コースで紹介していたので、そのコースを右回りで歩くことにした。車道は浄水場の辺りでは林道と呼べそうな道になっており、まずは林道歩きでスタートした。黒原川に沿って歩いていたが、数分で登山口標識が現れて左手の斜面に入った。細々とした登山道だったが、的確に目印テープが付いており、ときおりは標識も現れて無難に登って行けた。始めは小さな沢に沿って歩いたが、沢から離れると境界尾根へと斜面を登った。登るうちに支尾根を辿るようになり、登山口に入ってから40分で宍粟市と養父市との境界尾根に出た。そこからは北東へと尾根道を辿れば自然と三郡山に立つことになる。境界尾根も自然林が現れたり植林地が現れたりで、どちらであってもごくスムーズに歩けた。登山としては易しい部類と言えそうだった。但しずっと展望の無い尾根歩きだった。その尾根歩きで紅葉を眺めるのが楽しみではあった。三郡山に着くとそこはなだらかな上に植林に囲まれているため、山頂の雰囲気は無かった。山名標柱が無ければ通過点として通り過ぎてしまいそうだった。その三郡山のピークより少し北に展望地があるようだったので、そちらに寄り道することにした。寄り道と言っても数十メートル歩くだけだった。展望地に着くとそこは単に植林地の切れ目があるだけで、広々としたものでは無かった。その狭い展望は北西方向で、すっきりと見えていたのは藤無山だった。その右手には氷ノ山も見えていたが、植林に隠れ気味だった。氷ノ山はしっかり見たいと近くの木に登ってみると、思いの外すっきりと氷ノ山が眺められて少しは満足することが出来た。その後は山頂に戻り、南の方向へと境界尾根歩きを再開した。三郡山からは宍粟市と朝来市との境界尾根だった。その南尾根は自然林が多くあり、西尾根よりも更に紅葉が楽しめて雰囲気は良かった。その良い感じでコースの最高地点となる黒原山の山頂に着いた。そこは広く開けており三郡山よりも山頂らしさがあったが、周囲は植林が囲んでいるために展望は悪かった。その黒原山で遅めの昼食をとった。黒原山を後にすると後は概ね緩い下り坂となったが、小さなピークも幾つかあってそれを越えて行く。その途中で尾根の分岐点が現れると、そこは注意して南南東の方向へと目印テープを追った。そしてまた小さなピークに着いたがそこは奥組山では無く、その先の開けたピークが奥組山だった。そこはコースの中で唯一の展望地と言える所で、笠杉山が間近に見えており、南西遠くには黒尾山も見えていた。ただ23年前と比べると木々が展望を少し妨げていた。奥組山から先は下る一方だった。南西へと概ね古びたネットに沿って下った。もう尾根歩きを十分に楽しんだので、ひたすら目印テープを追って下ると最後は作業道に下り着いた。その作業道がいただけなかった。ミツマタのヤブがあるかと思うとヤブで無い所は地表がでこぼこしておりスムーズに歩けなかった。その歩き難さを我慢しながらの下りが20分ほど続いて浄水場へと通じる車道に合流した。そこから浄水場までは6分の距離だった。
(2019/11記) |