四度目の扇ノ山は計画してのものでは無く、その日の思い付きで登ってしまった。この日の計画は鳥取県側の氷ノ山山麓に山菜(フキノトウ)採りに出かけたのだが、まずまずの収穫を得て時計を見ると、時刻は11時が近くなっていた。この後は近くの低山(嶽山)を初めて登ろうと考えていたのだが、視界は春霞の強いもので、うすぼんやりとしていた。これでは未知の展望を期待しての登山は出来そうにもなかった。それよりも目の前に見えている雪山の方が面白そうに思え、急きょ目標を雪山にすることにした。雪山となれば目の前に氷ノ山があったが、今からの時間では難しいので、短時間で登れそうな山はと考えて扇ノ山を思い付いたものである。登山口は現在地から一番近い所として、八頭町(旧・八東町)からの「ふる里の森」コースとすることにした。
国道29号線を富枝地区で離れて、幾つかの集落を抜けて扇ノ山林道へと向かって行った。「ふる里の森」キャンプ場までは着けるだろうと考えていたのだが、あと1.5kmの地点で、突然のごとく路上の雪に阻まれてしまった。しかたなくそこより登山を開始だった。歩き出すと、路上の雪は暫くは消えていたが、「ふる里の森」が近づくと、一気に現れた。すぐに50センチほどの積雪になった。進むうちには雪崩の跡もあって、少々危なっかしい所もあった。なお、数人ほどが歩いたと思われる先行者のトレースが見られた。「ふる里の森」からは林道歩きとなる。林道も雪に隠されていたが、雪は良く締まっていたので、ツボ足でも問題なく歩いて行けた。林道を歩き始めてから50分ほどで登山口に着くと、もう一帯はすっかり雪に覆われていた。始めだけ確認出来た登山道もすぐに雪に覆われ、後は先行者のトレースとおおよそに尾根の方角を定めて登って行った。目印のあまり見られないコースなので、雪に隠されているとコースが掴み辛く、先行者もけっこううろうろしていた。ただコースとしては急坂は無く、また春の雪と有って靴もあまり潜らず、ツボ足でも気軽に登って行けた。ただ尾根に出る手前で少し急坂があった。尾根に出るともう山頂の避難小屋も見えており、ただそれに向かって尾根を辿るだけだった。再び緩やかな登りが続いた。一帯のネマガリダケはすっかり雪に隠されており、裸木が点々とある風景は冬の姿のままだった。そして展望はぐっと良くなり、振り返ると仏ノ尾から青ヶ丸、氷ノ山と雄大な山並みが視野いっぱいに広がっていた。何度か登った扇ノ山だが、この展望は初めてと言ってよい素晴らしい眺めだった。午後に入っているため、ぼちぼち下山者と出会うようになった。雪山では珍しい母子連れも見かけた。そして登山口から70分ほどで山頂に到着した。避難小屋の周囲こそ雪は溶けていたが、その前にはまだ2メートルの雪が残っていた。雪こそ多いものの気温は20℃を超えており、風はもう春のもので、うららかな陽射しが快かった。また山頂は雪でかさ上げされていたので、雪の無い季節と比べるとずっと展望が良くなっていた。特に小屋の前からすっきりと仏ノ尾が見えていたのが印象的だった。山頂でひとときを過ごすと下山は登りと同じコースを下った。この下りでは久々にシリセードを楽しんだ。
(2004/4記)(2008/4改訂)(2021/12写真改訂) |