TAJIHM の 兵庫の山めぐり <北但馬
 
扇ノ山    おうぎのせん 1310.0m 若桜町・八頭町・鳥取市
(鳥取県)
 
1/2.5万地図 : 扇ノ山
 
【2009年3月】 No.6 2009-37(TAJI&HM)
 
    天児屋山の尾根より  2009 / 3

 雪の扇ノ山は無雪期と違って一気に展望が良くなり、奥但馬の山並みをたっぷりと眺められる楽しみがある。またブナ林の風情も味わい深く、雪山としての魅力に富んだ山である。この扇ノ山を姫路から登ることを考えたとき、扇ノ山南麓にある八東ふる里の森からのルートがアプローチとして一番簡単ではと考えるが、コースとしては南東尾根を登ることになる。なるほど展望とブナ林を楽しめて悪くないコースなのだが、ピストン登山となるため別の尾根でも楽しめないかと考えたのが2008年4月のことだった。無雪期ならいざ知らず、雪の季節はどの尾根でも歩けるだろうと、登りこそ南東尾根を歩いたが、下山は南西方向に尾根をひたすら下った。予定では姫路コースを下りたかったのだが、歩き易いままに適当に下ってしまい、ふる里の森登山口からだけで無く、姫路コースの登山口からもずいぶん離れた位置に下りてしまった。おかげでふる里の森登山口への林道分岐点まで2時間を要してしまい、更に駐車地点の八東ふる里の森まで1時間歩いて、すっかりくたびれてしまった。それでも周回で歩けたことに新鮮さを覚え、次は予定のコースで周回したいと考えた。翌2009年の3月も半ばを過ぎたとき、暖冬ということもあってそろそろフキノトウが顔を出しているのではと思えてきた。そのフキノトウをちょっと摘みたいし、また雪山もまだ楽しみたいと考えたとき、自然と扇ノ山が思い浮かんだ。そこで扇ノ山を前年同様に周回で登ってみようと考えたのだが、最短で回ってみようと改めて「扇ノ山」の地図を開くと、姫路コースの東にある尾根が目に付いた。何ともなだらかな尾根で、ここだと決めた。但し、周回は前年とは逆回りで、始めにそのなだらかな南西尾根を登り、下山で一般ルートの南東尾根を下ることにした。そう決めるとさっそく実行だった。
 向かったのは21日の土曜日のこと。前日の春分の日もまずまず晴れていたが、この日は素晴らしい快晴だった。前年ほど長く歩くことは無いと考えて、自宅を離れたのは7時前だった。久々の鳥取県境越えだった。戸倉トンネル付近はほんの少し雪が残っているだけで、例年よりずっと雪は少ないようだった。若桜駅が近づくと、新しく道の駅が出来ていた。そこで軽く休憩をとってから八東ふる里の森へと向かった。その道は細見川に沿ってどんどん奥へと向かうのだが、そのとき嫌な標識を見た。ふる里の森の手前で落石があり、通行止めになっているとのことだった。ただこれで扇ノ山登山を諦める気持ちは微塵も無く、ちょっと余分に歩くことになり、山頂に着くのが遅れることになりそうに思えただけだった。その通行止めの箇所よりも手前で車を止めることになった。そこは廃屋が建つ位置で、その先から除雪がされていなかったためだった。そばに数台の車が止まっており、その列にこちらも止めることにした。雪は固く締まっており、スノーシューをザックにくくり付けて歩き出した。空は快晴の上に空気は暖かく、風はほとんど無かった。温度計を見ると14℃と、すっかり春の気温だった。道路の雪は2センチmほどで、少し歩くと一度途切れたが、その先でまた現れたり消えたりを繰り返した。10分少々歩いて、通行止めの立て看板が現れた。ちょうどふる里の森まで3kmの標識もあり、これで登山口までおおよその距離がつかめることになった。そのころには車道はすっかり雪に覆われていた。程なく崩壊箇所が現れたが、歩くことには問題無かった。車道は細見川沿いをずっと続く。車道の雪は次第に増えて、50センチを越えてきた。そして気温が高めということもあって、靴が潜り出した。そこでスノーシューを履くことにした。予想以上の雪にフキノトウはまだ早いかと思ったが、よく見るとガードレール間際の雪の消えた所に、ちらほらと顔を出していた。きれいな黄緑色で、花の開きかけたものと蕾のものと半々だった。そのフキノトウは帰路で摘むことにして、まずはふる里の森を目指した。そのふる里の森に着いたときは10時半に近い時間になっており、1時間以上余分に歩いたことになった。その辺りはナダレの跡が多くあり、その上を乗り越えて林道歩きの開始だった。もう雪の量は1メートル近くになっており、例年と変わらぬ雪ではと思われた。ただ黙々と歩くのみ。フキノトウは全く見られず、春は今少し先のようだった。徐々に高度を上げて登山口が近づいて来ると、前方に白い扇ノ山が現れた。但し山頂では無く、その手前の尾根だったが。振り返ると東山がすっきりと見えていた。けっこうはっきり見えており、この日の視界は良さそうだった。ふる里の森コースへの林道と姫路コースへの林道が分かれる分岐点に着いたときは、ふる里の森から1時間が経っていた。南西尾根を登るため、ここは左への道に入った。 支尾根を一つ巻くと、左手に緩やかな尾根が見えてきた。それが目指す尾根だった。その尾根へと徐々に近づくが、ちょっと林道歩きに退屈していたこともあり、その尾根端まで歩かずに早めに尾根の上に出ることにした。そこで少し手前の急斜面に取り付いたところ、雪が何とも滑り易かった。どうやら気温が上がったことで雪がべとついているためだった。それを木に掴まりながら無理やり登って何とか尾根に出た。すると日当たりが良いのか、尾根の雪はすっかり解けていた。そこでいったんスノーシューを脱ぐことになった。それですんなり歩けるとはならず、その尾根がけっこうネマガリダケのヤブになっていた。背中のスノーシューは引っかかるし、手に持つストックは更にじゃまで、ここでヤブコギをするとは計算外のことだった。そのヤブコギも登るほどに雪が現れて、ネマガリダケが隠され出すと、再びスノーシューで歩けることになった。そうなると自然な尾根を良い感じで歩けることになった。歩くうちに前方に山頂を見るようになったが、まだまだ遠かった。暫くほぼ平坦と言ってよいほど緩やかな尾根が続いた先で、少し急坂となった。そこを越した所で別の尾根と合流した。姫路コースの尾根だった。そこからは登山コースとなったことでもあり、尾根の木々は空いてきた。ブナも多く見られるようになって、ときおり足を止めて眺めたりもした。右手には青ヶ丸から氷ノ山の尾根が眺められた。くっきりとした視界の中に、尾根は残雪の姿だった。この日の視界の良さがより分かったのは、山頂が近づいて西の空が眺められたときで、西の彼方にうっすらと鋭い山が眺められた。白い大山だった。他にも湖山池も見えていた。本当に青い空で、その下には雪の尾根とブナ林が広がっており、雪山ならではの美しさだった。ところでこちらが尾根の風情を楽しみながら登っていると、突然パートナーがすたすたと登り出した。もう13時半を回っており、すっかりお腹が空いて我慢が出来ないので、早く山頂避難小屋に着きたいとのことだった。お先にどうぞと、こちらはあくまでもゆっくり登った。山頂に着いたのは14時が近い時間で、歩き始めてから4時間半が経っていた。山頂は例年と変わらぬ真っ白な姿で、避難小屋の周りのみ雪が解けていた。雪の量はざっと見たところ、2.5mほどありそうだった。その雪面に多くの足跡が残っていたが、着いたときは他に人影は無くひっそりとしていた。既に下山をしてしまったようだった。そして避難小屋の二階からパートナーが顔を出していた。山頂に着いて少し風を受けるようになったが、冷たさは無く、あくまでも涼しかった。気温を見ると17℃あり、やはり春だと思わされた。山頂で休んでいたのは40分ほど。軽く食事をするとともに、山頂に着いて新たに現れた奥但馬の山並みを眺めたりと、遅い時間ながらものんびりと過ごした。下山はふる里の森コースとなる南東尾根を下って行く。こちらにはスノーシューの跡もスキーの跡も付いていた。そして氷ノ山を雄大に眺めながらの下山だった。またブナ林の中も下って行った。この出会いがあって、雪の扇ノ山は氷ノ山に負けない雪山として満足の出来る山だと改めて思わされた。1170m地点で尾根は南の方向へと折れるが、そこは青ヶ丸と仏ノ尾の好展望地だった。そこで一息入れると、後は休まず下った。この日の雪は滑り易いとあって、スノーシューはかえって邪魔になったが、尾根を離れるまでは何とか履いたまま下った。そのため何度か滑ったり転んだりした。尾根を離れると更に急坂になったため、もうスノーシューで下るのは危険なので、脱いでツボ足で下った。そして緩やかになって歩き易くなると、再びスノーシューを履いた。それを繰り返しながら登山口へと下りて行った。途中からトレースを終えなくなり適当に下ったところ、沢の上を歩くようになってしまった。雪の下から沢音が聞こえていた。雪を踏み抜かないように注意しながら下ったが、決して正しい行動とは言えなかった。出来るだけ沢の端を歩くように下って行くと、何とか林道に合流した。ちょうどそこに登山口の標識が見えており、下ってきたルートは正しかったようだった。後はひたすら雪の林道歩きだった。そしてふる里の森を過ぎてからは、路傍に見えるフキノトウを摘みながらの帰路だった。そのためもあってか朝よりも更に時間がかかっての車道歩きになってしまった。車に戻り着いたときは18時が目前になっており、すっかり夕暮れどきだった。
(2009/4記)(2021/11改訂) 
<登山日> 2009年3月21日 9:15スタート/9:28ふる里の森まであと3km地点/10:02あと1.5km地点/10:27ふる里の森/11:23林道分岐点/11:56林道を離れる/12:07尾根に出る/12:24雪の上を歩けるようになる/13:16姫路コースに合流/13:47〜14:27山頂/14:47[1170m]地点/15:35〜38登山口/15:41林道分岐点/16:26〜33ふる里の森/17:41ふる里の森まであと3km地点/17:54エンド。
(天気) 素晴らしい快晴。澄んだ青空が広がっていた。気温もスタート時で14℃と高く、山頂では17まで上がっていた。まさに春の暖かさだった。風は弱々しく吹くだけで快さがあった。また視界も十分に澄んで申し分なしだった。雪は林道上では1mほど、山頂辺りで2.5mほどと思えた。下山中は、風に生暖かさも感じられ、陽射しを暑く感じるほどだった。下山の林道は夕方とあって9℃まで冷えてきた。終日、快晴が続いた。
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この廃屋の前から除雪されていなかった 落石のため立入禁止とあった 土砂崩れの所に来る 歩くには問題無かった
すっかり雪に覆われた車道を歩く そばを流れる細見川を見る ふる里の森に着く 幾つかナダレの跡があった
林道途中にあったナダレの箇所を越す 歩くうちに扇ノ山の尾根が現れた 振り返ると南の空にくっきりと東山が望まれた

 林道分岐点では西
 へと、姫路コース
 の方向に向かう

  前方になだらかな
  尾根が現れた そ
  れが目的の尾根だ
  った
尾根端から登らず、手前の急斜面を登る 尾根の上に出ると雪はほとんど見られなかった ネマガリダケのヤブコギは想定外だった
次第に雪が尾根を覆い出す 右手には青ヶ丸が徐々に現れた 前方に山頂を見る まだまだ遠かった
山頂を見ながら登る 尾根の急坂部をパートナーが登ってくる このブナの位置で姫路コースに合流した
ブナが次第に増えてきた 左の尾根が近づいてくる 青空と雪面、そしてブナの風景だった

 この日の視界は素
 晴らしかった 遠
 くは大山も見えて
 いた

     左の写真に写る湖山
     池を大きく見る

 南東には氷ノ山が
 すっかり姿を見せ
 ていた

    ゆっくりするこち
    らを尻目にパート
    ナーがすたすたと
    登って行く
林の先に小さく山頂避難小屋が見えている 雪の扇ノ山山頂は清々しさがあった 避難小屋を北側から眺める

 山頂に着いて東に
 奥但馬の山並みが
 望めるようになっ
 た

      左の写真の蘇武岳と
      論山を大きく見る

 上の写真の右手に
 仏ノ尾を見る

 左の写真の鉢伏山
 を大きく見ると、
 その手前に青ヶ丸
 が重なっていた

 山頂から北の方向
 を眺める

 左の写真の久斗三
 山を大きく見る

 山頂から改めて西
 の空に大山を見る

     大山を大きく見る

 下山を始める

 山頂を後にして南
 東尾根を下って行
 った

 南東方向には氷ノ
 山が大きかった
氷ノ山山頂に避難小屋を見る 三ノ丸にも小さく展望台を見る 南に見える後山を大きく見る

 パートナーが前を下
 って行く

      南西遠くには那岐
      山も望まれた
ブナ林を下る 1194mピークを過ぎて更に東へと歩く 山頂を振り返る
1170m地点は素晴らしい展望地 山頂よりも伸びやかな風景が広がる
上の写真の仏ノ尾を大きく見る ここから見る青ヶ丸はどっしりと重量感があった ここに来て陣鉢山の存在感が出てきた
1170m地点から扇ノ山山頂を見る 空は終日快晴が続いた 林道へ下るとき沢の上を歩いてしまった
ふる里の森コースの登山口に下り着いた 根明けの風景を見ながら林道を戻った フキノトウをガードレールと雪の隙間でちらほ
ら見る