扇ノ山には登山コースが幾つかあるが、姫路公園コースは積雪期に一部を歩いただけで、夏道としては歩いたことが無かった。コースの距離としては短い部類に入るので、暑い盛りに登るのが良いのではと考えて、機会を窺っていた。それを実行したのは2012年7月30日のこと。連日猛暑が続いており、この日も鳥取地方は35℃になるとの予想が出ていたので、これは厳しくなると覚悟して向かった。県道37号線を走って、まずは姫路公園に近づいた。公園でトイレ休憩としたが、車の外に出るともう30℃を越す暑さだった。姫路公園の先で河合谷林道に入って東へと向かう。林道はずっと舗装路だった。細くなったり広くなったり、また何度もカーブを曲がったが、急坂になることは無く、ほぼ緩やかな道として続いていたので、走るのは楽だった。途中で林道は二手に分かれたが、あくまでも東へと進んだ。もうそろそろではと思えだした頃に、道そばに数台の車が止められる駐車場が現れた。そこが登山口駐車場で、そこから目と鼻の先が姫路公園コースの登山口だった。駐車場に戻って車を止める。月曜日とあって、他に車は見えなかった。車の外に出ると、さっと涼しげな風を受けた。その辺りで標高は900mほどあり、意外なほど暑さは和らいでいた。気温はと見ると27℃で、ふもととは5℃ほど温度差があるようだった。この姫路公園コースについてはガイドブックでも紹介されており、またハイキングの様子は下の写真を見ていただくのが分かり易いので、詳細は記さないことにするが、まずは思っていた以上に易しいコースだった。始めに沢沿いを歩き、次に斜面を登り出すと、最初こそ杉林の中を登ったが、次第に周囲は自然林の風景となった。その雰囲気は悪くないと思っていると、それも道理で、コースは中国自然歩道になっていた。その雰囲気の良さと気温が高く無いことで、夏とは言えどもけっこう良い感じで登って行けた。それも丸太の階段が長々と続き出すと、やはり暑さに少しはばて気味になった。周囲の雰囲気は良くとも樹林に囲まれて登るため、展望は無いままの尾根登りが続いた。少しは展望が欲しいと思っていると、突然のように右手に小径が現れた。そこは檜蔵と呼ばれる所で、小径の先に大きな岩が見えていた。そこで大岩に立ち寄って岩の上に立ってみると、そこはちょっとした展望台になっており、一気に展望が開けた。眼前に扇ノ山を見るだけでなく、青ヶ丸から氷ノ山までが一望だった。その檜蔵の位置から山頂まではまだ標高差は150mほどあり、今少し登ることになった。冬に歩いたときは雪面が広がって展望があったのだが、夏は全く展望は無かった。そのうちにまた展望が現れるのではと思っていると、前方が明るくなった。そこで一休みと思って近づくと、小屋が見えてきた。どうやら尾根道からの展望が無いままに山頂に着いたようだった。山頂の避難小屋の前にはベンチが置かれて休憩出来るようになっていたが、強い陽射しのもとでは休む気になれず、避難小屋で休憩することにした。まだ11時を過ぎたばかりとあって誰もおらず、静かなものだった。避難小屋は二階が休憩する所になっており、その四方の窓を開けると、さっと爽やかな風が入ってきた。強くは無かったが、十分に涼しさのある風は、まさに一服の清涼剤と言えそうだった。二階と言えども周囲は高木が茂っているので展望は良いとは言えず、東に仏ノ尾と、木立の隙間から青ヶ丸を見る程度だった。そこで小屋ではひたすら涼を楽しんだ。おかげで山頂では一時間余り過ごすことになった。下山はすんなりと姫路コースを引き返した。山頂ではまだ時間が早かったこともあって昼食をとっていなかったので、下山の途中、檜蔵で昼食とした。そして後はすたすたと登山道を下ると、山頂を離れてから55分で登山口だった。休憩時間を除くと40分ほどとなるので、姫路公園コースはやはりごく簡単なコースだったと言えた。それでいて美しい樹林と涼を楽しめ、更に沢の水は冷たくおいしかったので、夏の登山としてはお薦めコースではと思えた。
(2012/8記)(2021/1改訂) |