天狗山については、中島篤巳氏の「岡山県百名山」で十分な紹介がされている。日生町周辺の山では早くから登ろうと考えていたが、2003年3月初旬の冬型気候の強い日に訪れる機会を得た。まず午前に烏泊山に登り、午後に入って天狗山を目指した。昼を回って天気はぐずつき出し、南麓の八幡宮から登り始めた時は小雨になっていた。しかし雨はすぐに止み、尾根に出て急坂を登り始めると、上空には青空も見られるようになった。急坂を登りきると共同アンテナが立っていたが、その頃にはすっかり快晴である。澄み切った視界の中に南北を山に挟まれた寒河の町並みや、その南には鹿久居島が大きく見えていた。共同アンテナの位置からは緩やかな尾根に変わるが、シダがはびこり出した。ただ道ははっきりとしており、シダも密生しているがシダコギをするほどでは無かったので、歩度が落ちるようなことは無かった。山頂手前のピーク(前山)に達して漸く天狗山の山頂を見ることが出来た。この頃になると空は再び黒雲が広がって、やがてアラレが落ちてきた。風も強いものである。周囲はいつの間にかシダが減って低木林に変わっている。そして山頂へ。八幡宮から50分とかかっていなかった。山頂の第一印象は、小ぎれいさと展望の良さである。手頃な広さの草地が広がり、岩が大きく露出している。そしてその岩の上に立つともう360度の眺望が広がっていた。瀬戸内海はもとより北、東、西と広がる南部丘陵の山々が一望なのである。丁度また陽射しが現れて、周囲の山々を明るく照らしてくれた。(ただ北の方向は雪雲が閉ざしていたが)。もう少し灌木が繁っていると思っていただけに、この展望はうれしかった。どうやら最近にでも木が切られたのか、辺りに真新しい切り口を見せる灌木が多く見られた。ところでこの山頂の西端に少し尖った岩があるが、この上に立っていると、山名の通り天狗の気分で周囲を眺めることが出来た。
(2003/3記)(2013/5改訂)(2021/3改訂) |