TAJIHM の 兵庫の山めぐり <岡山鳥取県境の山
 
桜尾山    さくらおうざん 956.3m 津山市(岡山県)
智頭町(鳥取県)
 
1/2.5万地図 : 大背
 
【2009年10月】 No.2 2009-95(TAJI)
 
    釈山の尾根より  2009 / 10

 鳥取県の山としては若桜町の山には何度も訪れているが、智頭町の山も高さは少し低くなるものの、その自然さが好きで何度か訪れている。その一つの桜尾山は、名前の響きに惹かれて鳥取側からでは無かったが、2001年に岡山県の加茂町物見から登っていた。そのときの登山がなぜか印象が薄かった。苦労して登った結果がモヤのきつい視界で展望を楽しめず、あまり岡山鳥取県境の山を登ったという実感を持てなかったためだった。その近くの篭山にも穂見山にも好印象を持っていただけに、出来ればもう一度、別のコースで登って桜尾山を確かめたいと考えていた。それを漸く実行に移そうと8年後の2009年秋に計画を練った。コースは当然変えて、岡山鳥取の境にある物見峠からひたすら県境尾根を歩いて行くことにした。尾根の様子については全く知らなかったが、不安よりもむしろ新しい出会いへの期待の方が大きかった。その物見峠コースを決めたとき、「大背」の地図を見ると、峠を挟んで釈山のあることが分かった。桜尾山と比べるとずっと物見峠に近かった。しかも峠との標高差は130mしかなく、桜尾山登山の前に足慣らしとして悪くないと思えた。そこで二つの山を登ることに決定した。
 向かったのは10月10日の休日のこと。例年この日は良く晴れることで知られているが、この日も快晴で、美作ICを下りて国道53号線に向かっていると、那岐山がくっきりと眺められた。その那岐山を横目に国道53号線で鳥取県に入り、那岐駅の近くで県道295号線に入って智頭町の西端位置となるを物見峠へと向かった。県道6号線に合流するとそこを左へ向かい、1kmほど走って峠に着いた。車は峠のそばに止めて、手始めに南へと県境尾根を登って釈山を目指した。釈山はやはり簡単な山で、30分とかからず山頂に立ててしまい、まさに足慣らしだった。その下山で桜尾山を眺めようと植林の切れ目に立つと、そこに桜尾山は見えていたが、その上空は黒い雲が広がっていた。この日の県境の空は意外と雲が多く、絶えず北から黒い雲が流れていた。但し流れ去った後は暫く青空が広がるので、明るい桜尾山になるまで少し待ってみることにした。ところが雲の動きは意外と遅く、結局陽射しが現れるまで30分ほど待つことになり、これは大きなロスタイムだった。物見峠に下りてきたのは11時40分になっていた。一度車に戻って一休みをした後、再出発したのはその7分後で、12時が近くなっていた。峠付近には目印類は一切無く、そこで適当に峠の斜面に取り付くことにした。一帯は植林地で、数分も登れば尾根上に出た。その尾根もすっかり植林帯になっており、手入れが良いので尾根道がすっきりと続いていた。しかも緩やかとあって、ごく気楽に歩いて行けた。ただ雲は午後に入って更に増えたようで、尾根は薄暗かった。少し風もあり肌寒さがあった。最初の小さなピークを越すと、尾根は北北西の方向に折れた。ずっとスムーズに歩けるため、このまま山頂までこの調子かと思い出したとき、植林が突然途切れた。右手は雑木帯で、尾根から左はササに雑草の混じるヤブになっていた。そのため展望が開けて前方に桜尾山が眺められたが、いざ歩き出すとこれがきついヤブだった、イバラも混じっており、厳しいヤブコギとなった。山頂までまだまだ距離があり、これはかなわないと思って右手の雑木帯に入ってみたが、傾斜がきつく灌木の小枝が煩わしいこともあって、結局クマザサをこぎながら尾根を登ることになった。そのヤブも15分ほどで終わって、再び植林地に入った。ただクマザサが疎らに混じっていた。その程度なら気楽な感じで登って行けた。834mピークに着く頃には周囲は自然林となり、クマザサは増えてきたが、ヤブ地のササとは違って、軽く押しのける程度で進んで行けた。自然林とクマザサの作る風景は優しさがあり、ときおり陽射しを受けて明るくなった。その中を軽いヤブコギで歩いて行くのは悪くなかった。歩くうちにクマザサは密生したり疎らになったりと、小さく変化した。何よりネマガリダケの無いのが良かった。ただ展望はさっぱりで、常に周囲を自然林が取り囲んでいた。尾根がはっきりしているので地図をイメージしながら歩き、尾根が急坂となって950mピークへの登りとなったことが分かった。北からの尾根と合流して、そこより今少し登った所が950mピークだった。木々を通して間近に山頂が見えていた。その山頂へと最後の登りにかかると、倒木が増えてきた。そこは伐採後の荒れ地のようで、切り倒されて放置された木が多くあった。荒れ地に付きもののイバラも混じっており、ちょっとやっかいだった。しかも傾斜がきつくなってきた。ただ展望は背後に広がってきた。まだ残された木があってすっきりとした展望では無かったが、篭山が陽射しに照らされて明るく見えていた。途中からイバラが増えてきたので南の方へと回り込むと、そちらは植林となっており、そちらから山頂へと出た。山頂にはマイクロウェーブ反射板がどっかりと場所を占めており、その骨組みの下が裸地になっていた。漸く着いたの思いで、ザックを下ろした。そのときは上空は青空が広がっており、少々暑さを感じながらの休憩だった。それでも気温としては16℃ほどだった。山頂は反射板の下以外はすっかりヤブ地になっており、その中に三角点があるはずだった。前回の記憶が消えていたので周囲を探ると、反射板の東側、ごく近い位置に草に隠れるようにして埋まっていた。少しばかり三角点周囲の草刈りをした。その三角点を見てから、遅い昼食をとった。この桜尾山に来た目的の一つに、智頭の山並みを眺めたいことがあったが、それには反射板に登るしかなさそうだった。前回は反射板に登ってもモヤのきつい視界で展望は得られなかったのだが、この日は問題無く見られそうだった。ところが、いざ鉄骨を登り出してみると、靴底がすり減っているためか、鉄骨に滑りそうになった。これは危険と考えて、登ることはあっさり諦めた。そこでヤブ地に入ってむりやり展望を求めることにした。東の一角が良さそうに思えたので、イバラをかき分け、倒木を乗り越えて近づくと、多少は木々にじゃまをされながらも、北から北西にかけて、まずまずの展望が得られた。篭山がすっきりと見えており、北西遠くに扇ノ山から東山までが眺められた。山頂では50分ほど過ごしたが、その間も雲が広がったり青空が現れたりを繰り返していた。下山については始めはピストン登山を考えていたのだが、午前に釈山を登ったとき、この桜尾山の南東に広く伐採地の広がっているのが見えたので、そこに立ち寄ってみることにした。まず950mピークまで戻り、そこより南の方向へ尾根なりに下った。一帯は植林地で下生えも少なく歩き易かったが、少し伐採地から逸れ出したので、途中でトラバースするように植林地の中を西へと歩いた。そして目的の伐採地に出てみると、そこはすっかり荒れ地になっていた。雑草とイバラとササが密生していた。けっして展望が良いとは言えなかったが、それでもそのヤブをかき分けて草丈の低い所に出てみると、西には後山の尾根を、また南に那岐山を眺めることが出来た。不安定な斜面に立ちながらの展望だったので、すぐに引き上げて植林地に戻った。そこからはそのまま南へずっと下っても良かったのだが、先ほどの荒れ地から西の方向に地図に載っていない林道が見えたので、そこに向かってみることにした。植林地内にはケモノ道程度のトラバース道が付いており、それを辿って西へと歩いた。幾つか山襞を巻いた後、そろそろ林道に出られるのではと思って南へ下ると、目的通りに林道に下り着いた。後は林道を東へと向かえば良いのだが、この林道からも展望が得られるのではと、少し西に歩いて見ることにした。期待したのは那岐連山の眺めだったが、周囲の植林が大きく、広戸仙が道の先に眺められたにとどまった。引き返して林道を東へと物見峠に近づくようにして歩いて行っや。てっきり林道は物見峠に通じる県道6号線に合流すると思っていたのだが、突然のように途中で終わってしまった。仕方なくそこより尾根を南へと下ると、また地図に無い作業道程度の道に出会った。その道もなぜか数分歩くだけで終わってしまった。そこで峠に通じる車道に出るべく南東へと適当に下ると、再び林道に出た。その林道も地図には載っていなかった。すっかり草深くなっており車の通った形跡は無かったが、南に向かっていたので確実に県道に出られそうだった。その通りで数分も歩くと、予定通りに県道6号線に合流した。どの位置に立っているのかよく分からなかったが、歩き出すとカーブの形で物見峠からさほど離れていないことが分かった。もう夕方の時間帯になっており、この山奥の県道を走る車は無いのではと思いながら峠へと登っていると、2台ほどの車が通過した。意外と物見峠は車の往来があるようだった。峠に戻ってきたのはちょうど17時。ヤブ尾根の登山となった桜尾山だったが、終わってみればスムーズな登山よりも面白かったのではと思えた。但しヤブ山好きだけの感想かも知れなかったが。
(2009/11記)(2021/10改訂)
<登山日> 2009年10月10日 11:46物見峠スタート/9:54県境尾根に出る/12:15植林地から荒れ地へ/12:28再び植林地に入る/12:47[834]mピーク/13:22[950]mピーク/13:44〜14:32山頂/14:50[950]mピーク/(展望地で休憩)/16:02林道に出る/(林道を一度西に歩く)/16:17林道に下り着いた位置に戻ってくる/16:23林道終点/16:33作業道に出会う/16:36古い林道に出る/16:42車道に合流/17:00エンド。
(天気) 雲の多い空で、絶えず黒い雲が北から流れてきた。ただ青空の広がることもあった。その雲の多いときと青空のときを繰り返していた。高い山にはガスのかかっているものも見られた。尾根では気温は13℃でほどで変わらなかったが、山頂では陽射しもあって16℃に上がっていた。風は気にならない程度で吹いており、視界は澄んでいるほうだった。
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取り付き地点から物見峠方向を見る 斜面に適当に取り付いて尾根を目指す 植林の尾根は緩やかとあって歩き易かった

植林が切れて展望
が現れた 左手前
方に山頂が望まれ


展望が現れたが、
俄然ヤブの尾根と
なった
厳しいクマザサのヤブコギだった 途中から少しクマザサは疎らになった 834mピークから尾根は西に向かった
ササの消えている所もあったが 何度かササの密集地を通る 木々を通して前方に山頂を見る

山頂が近くなって
急斜面になると、
背後に展望が現れ


左の写真の籠山を
きく見る
山頂にはマイクロウェーブ反射板が建っていた ヤブで無いのは反射板の下だけだった 山頂の周囲のヤブを見る
反射板の東側に三等三角点(点名・物見峠)を見た 山頂の東側で展望を探ると、ヤブ地の中から北東に展望が得られた

上の写真の右隅、
東山の辺りを大き
く見る

鳴滝山の左に頭を
覗かせるのは氷ノ
山のようだった
上の写真の陣鉢山を大きく見る 上の写真の東山を大きく見る 950mピークに戻って南へと尾根を下る

 遠くから伐採地に見
 えた所は厳しい草ヤ
 ブだった ただ展望
 は良かった
上の写真の沖ノ山を大きく見る 上の写真の駒ノ尾山を大きく見る 上の那岐山を大きく見る
ヤブ地から見えた林道を目指して植林地をト
ラバースで歩いた
予定通りに林道に下り着いた そのまま東
へ向かわず展望を求めて一度西へと歩いた
暫く歩いたが周囲は植林地で展望は開けなか
った この広戸仙が眺められたにとどまった
  
林道を引き返して西へとどんどん歩くと、途
中で終わってしまった
その後は南へと植林の尾根を適当に下って行
った
長くも歩かず、狭い道幅の作業道に下り着
いた
作業道もすぐ終わったが、そのまま東に下る
と、また作業道に出会った 但し草深かった
草深い道を下ると、物見峠に通じる県道6
号線に合流した
下山後に下西集落に戻ってきたとき、夕暮
れ色の那岐山を見る