善通寺市は何と言っても四国霊場第七十五番札所の善通寺が有名だが、その善通寺の西に五つの峰が並んでおり、五岳山として善通寺の山号にもなっている。その五山のうちの香色山、筆ノ山、我拝師山がガイドブックの新・分県登山ガイド「香川県の山」に紹介されていた。そしてコースとしてはJR善通寺駅が起点であり、終点になっていた。
2013年の9月は仕事の関係で2週間ほどを香川県の琴平町に滞在していたが、その琴平町への移動日が14日の休日だった。そこで少し早めに現地に着いて、そちらでハイキングを楽しむことにした。JR琴平駅の一つ手前が善通寺駅であったので、そこでガイドブックを参考に駅を起点に香色山、筆ノ山、我拝師山の三山のハイキングを実行することにした。善通寺駅に降り立ったのは午前の10時半過ぎ。台風18号が近づいており、予定では翌15日の朝に四国沖を通過することになっていた。そのためか空気は生暖かく、湿気をたっぷり含んでいる感じだった。善通寺駅の前に立つと、駅前通りは西に真っ直ぐ伸びており、その先に頭をもたげたような形の山が見えていた。それが我拝師山のようだった。湿度が高いためか視界はうっすらとしており、我拝師山も薄ぼんやりと見えていた。整然とした駅前通りを1.5kmほど歩くと丁字路となり、そこを右に曲がると、善通寺の南大門は目の前だった。立派な五重塔も見えていた。五山の始めに香色山を登るのだが、その登山口へは善通寺の境内を抜けて行くことになる。善通寺は大寺院の風格が有り、大勢の参詣者で賑わっていた。広い境内をコの字に曲がって進むと、境内を抜けて駐車場に出た。その先に見えるこぢんまりとした山が香色山だった。香色山は山頂まで遊歩道が通じており、その遊歩道はほぼコンクリート舗装とあって、散歩をする感じで歩いて行けた。そして登山口から20分ほどで山頂に立てた。石仏が置かれた山頂は樹木が少ないもののあまり展望は良いとは言えなかったが、少し下がった所に展望台があり、そこからは讃岐平野が一望だった。視界が悪いのは残念だったが、そのうっすらとした視界の中に飯野山が何とか確認出来た。展望と言えば山頂から西に、筆ノ山と我拝師山の並ぶ姿が間近に眺められた。次は筆ノ山を目指すのだが、山頂から筆ノ山方向に向かう道があり、そちらは遊歩道では無く、ごく普通の山道だった。それを辿って下ると、香色山の山裾を巡るミニ八十八ヶ所の遊歩道に出た。その遊歩道を左手へと下って車道に下り着いた。その後は車道のままに歩いて西へと進むと、程なく筆ノ山の平谷登山口が現れた。それを見てそこから登って筆ノ山に立つことにした。少し傾斜のきつい所もあったが、里山道の雰囲気があり、無理なく登って行けた。そして尾根に出て程なく大坂峠からのコースに合流した。そこからは北の方向に山頂を目指して尾根道を辿った。最初は問題なく登っていたのだが、樹木が少なくなって強く陽射しを受けるようになった。更に登山道の傾斜が増したことで、蒸し暑さもあって急速にバテてきた。足取りは重くなり、のろのろと言った感じになりながらも何とか筆ノ山の山頂に立った。山頂の木陰に入ると、そこは涼しい風が通っていたので、とにかくじっとして体力が回復するのを待った。そして人心地がついたところで、漸く体を起こした。筆ノ山の山頂には四等三角点(点名・筆之山)が置かれていた。その位置こそ展望は悪かったが、そこより登ってきた方向に戻ると、我拝師山が大きく聳えているのが眺められた。その右手には雨霧山の尾根も望めた。展望をひととき楽しんだ後は、登ってきた道を引き返す形で下山を開始した。この下山では大坂峠コースをずっと下って大坂峠に下り立った。そこは車道を挟んで我拝師山の登山口が向かい側に見えていた。ガイドブックではそのコースは紹介されておらず、我拝師山の山裾を巡って、西側から登ることになっていた。ここまででバテ気味だったことでもあり、時間のかかるガイドブックのコースは歩かず、目の前の大坂峠から始まる道を登って行くことにした。その大坂峠コースがけっこう厳しかった。我拝師山はすっくと立つ姿だけに、途中からは急坂登りが続くことになった。おまけに蒸し暑いとあって、一度は回復したかに見えた体が筆ノ山の山頂に立ったとき以上にバテてきた。堪らず何度も小休止を繰り返しながら登った。「山頂まで15分」と書かれた標識が立つ地点まで来たとき、そこはちょっとした展望台になっていたので、そこでは長い休憩もとった。その先で漸く傾斜は緩んできたものの、バテた体にはきつく、何とものろのろとした歩みになってしまった。それでも山頂は近いとの思いで、何とか登りきって山頂に立った。登山口から1時間かかっていた。その山頂は陽射しが当たっていたため、木陰を求めて、そこで体を横たえた。暫くはじっと死んだ状態になっていた。じっとしていると、ときおり涼しい風を受けることが出来て、徐々に体力が戻ってきた。漸く周囲を眺める余裕が出てきたが、この我拝師山の山頂からの展望はほとんど無かった。それでも山頂に立てたことだけで満足だった。歩けるまでに体力が戻ったところで、下山開始とした。下山は登ってきた大坂峠コースを引き返した。下山は休まず急斜面をどんどん下ったため、山頂から大坂峠までは30分と登りの半分の時間で下りて来られた。後は峠を通る車道を北へと下った。麓が近づくと公園のような所が現れて、そちらの小径を辿った。そこは「善通寺五岳の里 市民集いの丘公園」で、立派な管理棟も立っていた。管理棟の中に入ると冷房がよく効いており、暫くの間、ほてった体を冷やすことに専念した。もう麓に下りてきたのだが、ゴールは善通寺駅なので、そこからも長かった。筆ノ山の山麓をずっと歩いて善通寺に戻り、そこを抜けると駅前通りを最後に歩くのだが、市民集いの丘公園から善通寺駅までは、ほぼ一時間かかることになった。結局この日は6時間近くもハイキングすることになり、十分過ぎるほど疲れて善通寺駅で琴平駅行きの電車を待った。
(2013/10記)(2021/2改訂) |