「新分県登山ガイド・沖縄県の山」を見ると、沖縄県と言えども島であることに変わりなく、一日たっぷりかかる山は見当たらないようで、どうも一日あれば少なくとも二つは登れそうだった。2009年の1月第二週はその沖縄へと三日行程で山行に出かけたが、メインとする山で無く、時間があれば立ち寄るつもりで考えていた山の一つが熱田岳だった。沖縄本島で登山対象となる山は縦に長い島の北半分に集中しているが、この熱田岳はその山域とは少し離れて中央寄りに位置している。具体的には国道58号線を北から南下したとき、名護市から恩納村に入ってすぐの辺りとなる。一帯は「県民の森」としてレクリエーションの場になっており、その中にあって軽いハイキングを楽しめる丘として佇んでいる。
沖縄山行の初日は9日。前日の天気予報では曇り一時雨となっていたが、予想は良い方に外れて、雲は多いながらもときおり青空も覗く天気だった。但し強風が吹いており、穏やかとは言えなかった。この日のメインは名護市街の東に立つ名護岳で、その登山を終えたのは14時過ぎだった。この日の予定では名護岳を13時には下山としていたのだが、寄り道もあって少し遅くなってしまった。この日に予定していたホテルは名護市の南外れ、恩納村に近い喜瀬にあるリゾートホテルだったが、そうなるとこの熱田岳が残りの時間ではちょうど手頃だった。ホテルの位置からだと5分ほどの距離ではと思えた。その熱田岳に向かうとなると逆に少し時間が余り気味になるので、始めに「県民の森」の中央にある総合案内棟に立ち寄った。そこまで走って来ての感想は、「県民の森」はスポーツ広場やキャンプ場があって野外活動の場としてすっかり整備されているということだった。駐車地点は少し戻って、A,Bコースの登山口が近い森林学習展示館の駐車場とする。強風の吹き荒れる天気のためか、辺りに人影は見なかった。歩き出して車道を渡った所にBコース登山口があった。そこより登り出すと、コースは遊歩道として良く整備されていた。道は良かったが、森は薄暗かった。昼頃には青空がときおり広がっていたのだが、その頃にはほぼ曇天の空に変わっていた。更に冷たさのある風が吹いており、沖縄とは思えぬ寒さを感じた。森は学習の場になっているようで、多くの木に名前の札が付けられていた。周囲の木立を見ていると松の木が多いようだったが、葉が細長く本州ではあまり見かけない種類だと思っていると、「リュウキュウマツ」の名札が付けられていた。熱田岳は最高点でも160mの高さしかないので、簡単すぎて物足りないのではと思っていたのだが、山頂が近づいたときに急坂も現れて、登山としての面白さも少しはあった。それでもごく小さな山なので、登山口から15分ほどで尾根に着いた。そこで尾根コースと合流し、ほんのひと登りで山頂だった。山頂と言っても三角点も山名標識も無く、また山頂として展望も開けていないので、単に一番高い所と言う感じしか無く、そのまま遊歩道歩きを続けてしまいそうになった。それでも最高点に敬意を表して足を止めることにした。その山頂で一段と強く風を受けることになった。気温は15℃ながらそれ以下ではと思える冷たさだった。ただせっかくの山頂なので、少しは展望を得ようと周囲を眺めると、北の方向の木立が少し空いていた。そこで風の冷たさを我慢しながら手頃な木に登ると、ブセナ海中公園辺りの風景とその東に広がる低山群が眺められた。ただ木に登ってこその眺めで、遊歩道に降り立つと尾根道の両側を木立が囲んでいる風景だった。山頂には10分とおらずに遊歩道歩きを進めた。尾根なりに遊歩道は続いており、北東方向に下り出した。その下り出したときに、ちょっと展望が現れた。北の方向で、青い海とその先には本部半島がうっすらと見えている。海岸に近い海の色はエメラルドグリーンで、その美しい色合いを見ているとここは沖縄だと実感させられた。のんびりと眺めていたかったが、ただそこも風が強く少し足を止めていただけで下山を続けた。登山道は遊歩道として最後まで続いて、ごく簡単な感じで車道に合流した。ただそこは駐車場の位置からは少し離れているようだった。後はすっかり薄暗い空の下、緩い坂で続く車道沿いの遊歩道を戻って行った。1時間とかからぬミニハイキングで終わったが、歩き易い遊歩道で気楽に山上に立て、そして青い海も眺められて、熱田岳に好印象を持って終わることが出来た。
(2009/2記)(2021/10改訂) |