沖縄本島の中北部、名護岳の北に位置する多野岳は名護岳よりも標高はあるのだが、緩やかな地形を利用してか山頂には幾つも電波塔が建っており、そこまで車で行くことが出来るので、いわゆる登山対象の山とは言えなかった。そんな多野岳だったが、山頂には二等三角点(点名・多野岳)が設置されているので、それを見ようと向かったのは2018年6月の第二土曜日のことだった。
暑い季節の沖縄も体験しようと出かけて、この日の午前は名護市街に近い名護岳登山を楽しんだ。梅雨の季節に登ったとあって上空は薄黒い雲が広がっていたが、青空も少し覗いていた。その空の下、名護岳山頂から多野岳が間近に見えており、午後の時間は多野岳で三角点深訪でもするかと思い付いた次第だった。名護岳登山を終えると、その足で多野岳へと向かった。国道58号線に出て北へと向かっていると、上空はすっかり曇天になってしまった。しかも黒い雲だった。仲尾次交差点で多野岳の標識が現れると、それに従って右手の車道に入った。集落を抜けると林道の様相となって上り坂に入った。標高差にして370mを登るとあって上り坂が長々と続いたが、その途中より雨が降り出した。しかも強い降り方だった。どうなることかと思ったが、一時的なことだったようで、山頂が近づいて止むことになり一安心だった。山頂へは少し離れた所から歩こうと、一番大きな電波塔のそばに車を止めた。そこより車道に出て山頂へと歩き始めた。すると途中でロープが張られて車は進入禁止になっていた。その理由はすぐに分かった。山頂が間近になると駐車場が現れ大きな建物(レクレーションホール)も現れたが、そこは廃墟になっていた。どうやらその関係もあってのロープかと思われた。レクレーションホールのそばを通るとその先が数メートル高くなっており、階段が付いていた。その階段を登った所が多野岳の最高地点で、二等三角点を見た。その三角点は哀れにも四分の一ほどが削られていた。一帯は裸地になっていたこともあってまずまず展望があり、梅雨空の下、西の方向に本部半島の山並みを、南には先ほど立っていた名護岳が眺められた。三角点探しが目的だったこともあり、展望を楽しむとすぐに車道へと引き返した。なお山頂近くに立っていた標識からプールもあったようだった。山頂の施設はひょっとするとバブル期の名残ではと思いながら駐車地点へと戻って行った。
この多野岳山頂の施設について帰宅後に調べてみると、何とホテルも建っていたようだった。数年前に取り壊されたようだったが、2万5千分ノ一の地図をよく見ると、三角点の北側に大きな建物の記号があり、それがホテルを示していると思われた。それを知っていたなら山頂に立ったとき、別の観点で周囲を眺めたのにと思った。
(2018/6記) |