嘉津宇岳の登山コースとしては、勝山地区から延びる車道を終点まで車を進めて、そこから始まるコースを登るのが一般的のようであり、こちらも初めて訪れた2006年1月では、その東からのコースで登ったものだった。登っての感想は、山頂に広がる鋭い石灰岩の風景と素晴らしい展望には満足したものの、登山としては簡単過ぎると思えて物足りなさが残った。また遠くから見る嘉津宇岳は本部半島の盟主として堂々たる風格を持っているのに、それを20分ほどで登ってしまうのは少々もったいないのではとも思った。その嘉津宇岳とは尾根続きとなる安和岳を2011年の12月に登ったところ、その途中から嘉津宇岳コースが分かれていた。その日の安和岳登山はけっこうハードであり、十分に楽しめたので、同じような感じで嘉津宇岳も登れそうに思えて、ぜひ谷筋からの嘉津宇岳コースにチャレンジしたくなった。それを実行したのは1年後の2012年12月のことだった。どうも12月が来ると沖縄に出かけたくなるようで、2012年も12月となってまた出かけてしまったものである。
嘉津宇岳に向かったのは12月24日のクリスマスイブだった。朝の空は少し雲が多かったが、次第に晴れ間が広がろうとしていた。嘉津宇岳では半日程度のハイキングで済みそうだったので、午前は本部半島の先端に近いウフグシクムイとミラムイ(本部富士)のハイキングとした。その二つの山を登り終えたのは12時を回ったばかりの時間だった。それから安和岳の麓となる名護市の勝山地区へと移動した。車は勝山公民館の敷地内では無く、道路を挟んでその前にあった駐車スペースに駐車とした。その駐車地点からは安和岳と古巣岳は見えていたが、嘉津宇岳は古巣岳の背後に隠れて見えなかった。安和岳コースと嘉津宇岳コースの分岐点までは、前年の安和岳登山と一緒のため詳しくは書かないが、案内標識に従ってシークァーサー畑へと入り、そして枯れ沢に作られている登山道を登って行った。シークァーサー畑の入口から15分で、右手に古巣岳コースが分岐した。次は嘉津宇岳コースが同じく右手に分岐することになる。暫くは谷筋コースをなぞるが、分岐点の案内標識を見落とさないように注意しながら歩いた。そしてほぼ分岐するだろうと思われる辺りに来たとき、それらしき登山道が右手に現れたものの、入口に標識は付いていなかった。そこだと思ってそのコースに入ることにしたが、どうも標識は風雨で無くなってしまったようだった。古巣岳コース分岐点から嘉津宇岳コース分岐点までは30分ほどかかっていた。漸く初めて歩く道となった。周囲は樹林に囲まれており、相変わらず展望は悪いと思っていると、一度背後が開けてそこに意外な近さで八重岳が眺められた。分岐点からは真っ直ぐに嘉津宇岳に向かうと思っていたのだが、コースは巻き道を歩くようになり、更に下り坂になった。どの辺りを登っているのかと、ここに来てようやく地図を開いた。どうやら山頂へは嘉津宇岳の北西にある小さなピークを巻いて近づくようだった。どうも遠回りで嘉津宇岳に近づくようで、予想していたよりは時間がかかりそうに思えた。もうコース通りに歩くしかなかったので、焦らず忠実にコースを辿った。嘉津宇岳へは北西側から近づいていたが、やがて傾斜が増してきて前方が明るくなったので、これで山頂かと思い、最後のひと踏ん張りだとばかりに登ると、そこは山頂の西隣りの小さなピークで、山頂が少し離れて見えていた。尾根上に出たことで、冷たい風を一気に受けることになった。その辺りも山頂と同様に鋭い石灰岩が露わになっており、歩き難くなっていた。そこからは一度尾根を離れて、巻き道を歩くことになった。その巻き道を歩いているとき、右手から別の登山道が合流した。古巣岳からのコースだった。ここに来るまでそのコースがあることを知らなかったので、ちょっと驚いた。合流点からはひと登りと言った感じで、嘉津宇岳の山頂に立った。7年ぶりの嘉津宇岳だった。山頂には新しい標識は無く、鋭い石灰岩が一帯を占める様は、以前と変わらぬ佇まいだった。そして変わらず素晴らしい展望地だった。東は名護市街とその背後に名護岳があり、南は名護湾、北東はヤンバルの森で西は八重岳から安和岳の尾根と、まさに360度の眺望だった。但し山頂は冷たい風が一段と強く、それを我慢しながら展望を楽しんだ。一休みしたところで、さて下山だったが、新しい考えが浮かんだ。予定では車道終点の登山口へと下って、後は車道歩きで駐車地点に戻ることにしていたのだが、古巣岳コースで下山したくなった。時間は15時を回っていたが、何とか明るいうちに下山出来るのではと思えたので、その考えを実行することにした。歩いてきたコースを引き返して、古巣岳コースに入った。ちょっとヤブっぽいコースかと考えていたが、嘉津宇岳コースと同じ程度では歩けた。また目印テープが点々と続いていた。ただこのコースも樹林に囲まれて展望は無かった。目印を追って下って行くだけだった。古巣岳が間近になると、辺りがやや平坦になったこともあって、やや地形が分かり難くなった。ここが一番高い位置ではと思う所に立って、そこを古巣岳の山頂と思うことにした。そこは展望が開けて周囲を眺められるようになったが、このとき分かったことは、前年に古巣岳を登ったときは、そのピークに立っていなかったことだった。次に少し南よりのピークに立ったが、そこが前年に山頂と思って立っていた所だった。そこも展望が良く、どちらを古巣岳の山頂と呼んでも良いのではと思った。もうそこからは二度目のコースとなるので、全く不安も無く下って行けた。古見台へは立ち寄らず、沢沿いのコースに合流すると、後はシークァーサー畑へと下って行くだけだった。当初は3時間程度のハイキングと考えていたところを、結果としては4時間ほどかかってしまったものの、何とか明るいうちに下山出来て、安堵の思いで駐車地点に近づいた。
(2013/2記) |